日野は本来「被害者」の立場だった
そもそもの間違いは「彼」の違法薬物犯罪が発覚した時点での日野の対応だ。
企業スポーツには「広告塔」の側面がある。選手一人一人、特にプロ選手は「広告塔」を形成する者であり広告の出演者であるとも言える。
その広告塔が「犯罪・不祥事」を起こした場合、企業は当然「被害者」の立場となる。彼の犯罪のせいで「企業イメージ」が大きく損なわれたのだから。
CMの場合、出演者が「犯罪・不祥事」を起こせば企業イメージに多大な損害を与えるだけでなく「新CMの制作」など当面の実害も生ずる。
このため企業側はこうした場合、出演者側に損害賠償を請求するのが常識となっている。契約書にその旨、記されていなくても「損害が立証されれば」賠償は認められる。
日野も「広告塔の犯罪」にこうした対応をとるべきだった。
実際、普通に考えて日野・協会関係者ともにこの一報を聞いた時は思ったはずだ。
「なんて事をしてくれた!どうしてくれる!」
この「被害者意識」こそ正しい。
実際、普通に考えて日野・協会関係者ともにこの一報を聞いた時は思ったはずだ。
「なんて事をしてくれた!どうしてくれる!」
この「被害者意識」こそ正しい。
(実際に彼を訴えて損害を賠償させることができるのかは不明だ。多分こういうケースは前例がない。ただこの初動での声明は「裁判に勝利すること」が目的ではない。日野が自らの立場を世間に毅然と表明することなのだ。
たとえ社員選手であれ、業務上の犯罪ならともかく、その私生活上の犯罪に企業はなんら責任がないこと、も含めて)
日野の「活動自粛」が意味するもの
ところが日野はまず「お詫び」と「無期限活動自粛」を表明してしまった。
ところが日野はまず「お詫び」と「無期限活動自粛」を表明してしまった。
この時点で日野は「被害者」ではなく「共犯者」の立場を自ら選んでしまったと言える。
もちろん協会も含め内外から「日野の責任と反省」を求める声もあったのだろう。だがこれは毅然と拒否するべきだったのだ。自らが「被害者」であることを正面から論理的に説明すべきだった。
もちろん「被害者」とはいえチーム内において「共に活動する時間が多かった」と推測される「人脈」がある以上、捜査に全面協力する「社会的責任」は存在する。だがその場合の名目は「活動自粛」などではなく「捜査協力のための活動休止」がいいとこだろう。私の感覚では活動休止も必ずしも必要ではなかった。単に「捜査に全面協力」を表明するだけでよかった。
この「日野の決定」についてはもちろんその先例となったトヨタの決定も大きい。個人犯罪について「チームとしての反省と活動自粛」をこの時ラグビー界は容認してしまったのだ。
この「日野の決定」についてはもちろんその先例となったトヨタの決定も大きい。個人犯罪について「チームとしての反省と活動自粛」をこの時ラグビー界は容認してしまったのだ。
日野の「共犯者声明」により、「彼個人の犯罪」は「日野ラグビーの問題・責任」となる。こうなると話は悪い方にとんとん拍子だ。
彼個人の犯罪が日野ラグビーの問題・責任である以上、これはラグビー界の問題・責任となり、当然トップリーグも共犯者・責任者としての声明を発することとなる。「リーグの活動休止と反省の表明、教育の徹底」を表明する事になった。これが今回の決定だ。
(短期間に3人のトップリーグ選手が違法薬物で逮捕された事は「異常事態」ではあると私も思う。私が調べた限りではプロ野球やJリーグでは現役選手が違法薬物で逮捕された例などないのだ。(ドーピングは除く)
「新型コロナによる休止期間」で、できうる限りの「再発防止策」を講じる事には全く異論はない。ただその事と、選手・ファンに犠牲を強いる「試合中止」は全く別次元の問題である。)
(短期間に3人のトップリーグ選手が違法薬物で逮捕された事は「異常事態」ではあると私も思う。私が調べた限りではプロ野球やJリーグでは現役選手が違法薬物で逮捕された例などないのだ。(ドーピングは除く)
「新型コロナによる休止期間」で、できうる限りの「再発防止策」を講じる事には全く異論はない。ただその事と、選手・ファンに犠牲を強いる「試合中止」は全く別次元の問題である。)
そもそもこれは「ラグビー精神」で解決すべき問題ではないのだ
「危機管理は初動で決まる」とも言われる。本来「被害者」である立場を自ら放棄して「反省・自粛」など表明すればあとはもうぐしゃぐしゃ。
「危機管理は初動で決まる」とも言われる。本来「被害者」である立場を自ら放棄して「反省・自粛」など表明すればあとはもうぐしゃぐしゃ。
絵に描いたような「危機管理の初動の失敗例」である。
日野の関係者も協会幹部も「崇高なラグビー精神」を以って「社会への責任感・正義感・倫理観」を考え「真面目に」事に当たったのだろう。
「空前のラグビー人気」がその純粋な思いに拍車をかけたかもしれない。
だが危機管理の素人が「純粋さ」だけでこうした困難に向かい対応を誤れば結果はかくも悲惨だ。
なんの罪も落ち度もない一般選手はラグビーをする権利を奪われ、ファンはラグビーを観戦する楽しみを奪われ、協会・リーグは収益を奪われた。
のみならずラグビー界のイメージダウンは避けられない。
何しろ「薬物汚染はラグビー界の問題である」事を自ら表明したのだから。
誰にとっても良いことなど一つもない結果だけが残った。
この決定は太田チェアマン(写真)、森会長、岩淵専務理事の3人で行われ、異論はなかったという。
もちろん3人とも代表歴のある「元名選手」。だが「大組織の危機管理の専門家」などではない。
この決定は太田チェアマン(写真)、森会長、岩淵専務理事の3人で行われ、異論はなかったという。もちろん3人とも代表歴のある「元名選手」。だが「大組織の危機管理の専門家」などではない。
今回の反省を踏まえ、今後のため、まずできること。
「危機管理の専門家」を協会内に置くことだ。少なくともこうした場合「普通の弁護士」にだけでも相談していたらこうした事態は避けられたのだと思う。
「新型コロナ」が収まれば今季もトップリーグは続く、さらに新リーグへと続く。
今後またなんらかの犯罪者が出るたび、間違った「ワンチーム精神」を発揮して「ラグビー界としての反省」「選手教育のため試合休止」など繰り返されるのはカンベンして欲しいのだ。
〈追記〉この問題を考えるにあたり「危機管理」という切り口でヒントを与えてくれたのはOさんでした。お礼申し上げます。この文章がOさんの意と沿うものであったかはわかりませんが。
「新型コロナ」が収まれば今季もトップリーグは続く、さらに新リーグへと続く。
今後またなんらかの犯罪者が出るたび、間違った「ワンチーム精神」を発揮して「ラグビー界としての反省」「選手教育のため試合休止」など繰り返されるのはカンベンして欲しいのだ。
〈追記〉この問題を考えるにあたり「危機管理」という切り口でヒントを与えてくれたのはOさんでした。お礼申し上げます。この文章がOさんの意と沿うものであったかはわかりませんが。
