ファンの間で、とかく物議をかもすレッドカード、そして出場停止処分。
トップリーグ第4節終了時点において「3試合以上の出場停止処分」は5件。
西川(サントリー)、アーノルド(ヤマハ)、プル(ホンダ)、クリシュナン(日野)、そして坂手(パナソニック)。
処分理由は、
「ボール保持者の肘打ち」が3件、「密集での頭頚部へのショルダーチャージ」が2件。なんにせよ、ファンにとって、選手当事者達にとって残念な数字である。
ちなみに昨シーズンはリーグ戦全56試合で「出場停止」「厳重注意」ともにゼロ。レッドが1。
https://www.top-league.jp/ranking/2018/foul.html
今年の「異常さ」が際立つ。もちろんこの「急増」は先のW杯で「新基準」が示されたものの、現場選手の意識が追いついていないことによる。
ここでは今シーズンの「レッド相当の危険なプレイ」と「処分」の実態を検証し、今後の対応を考える。

西川レッド











出場停止処分の裁定は協会規律委員会が下す

こうした裁定について、時にレフェリー・TMOへの批判がされる場合がある。
「これでレッドは厳しすぎるんじゃねーの」
「このレフェリーおかしいよ」「TMOどこ見てんだ」ってやつだ。
確かに試合中の判定については現場のレフェリー陣により決定がなされる。
しかし試合後の「出場停止」などの処分は「協会の規律委員会」が裁定を下す。上記5件の中には試合中にはレッド、イエローの判定が下されなかったものの、試合後「委員会」の判断により「出場停止処分」が下されたものもある。アーノルド、プルの2件だ。ともに「ボール保持者の肘打ち」。
実際、特に早い動きの中での「肘打ち」などは「一瞬の出来事」で近くにいても誰も気づかず、プレイ後のアピールもなく過ぎていく事もあるようだ。もちろんテレビ中継の放送席でも誰も気づかない。やられた「被害者」だけがわかる。

肘打ちでKOしたダン・カーター、淡々とコンバージョンを決める
アーノルドの肘打ちの「被害者」はダン・カーター。
肘打ち食らってダウン。その間に神戸ナエアタがトライ。
カーター、しばらくうずくまっていたが顎を押さえつつ立ち上がり、淡々とゴールキックを決めていた。
このアーノルドの肘打ち、他の「出場停止」が全て3試合なのに対し、この件だけ「4試合出場停止」
他の「肘打ち」が正面の相手に対し、いわば「突破」しようとする「勢い余って」と見られるのに対し、アーノルドは横から来たカーターに対し、ハンドオフのような体勢で肘を出している。さらに相手が「ダウンした」という「被害の大きさ」で、その分、処分が重くなったということなのだろう。
カーター1カーター2























「レッドカードは自分のスキル不足のせいだ」坂手

処分は「規律委員会」が繰り返しビデオを検証し、裁定したものである。こうした「レッドなし・試合後の重い処分」をみれば、処分内容の「妥当性」についてレフェリー・TMOの判断を批判することの無意味さがわかるだろう。試合中の判定が及ばず裁定が「重くなる」ことはあっても、TMOを経た上での判定が「重すぎた」ことなどないのだ。
もちろんレフェリーだって「レッド」なんか出したくて出すわけじゃない。

実際今回私も5件全て見直してみたが、W杯時に世界に示された基準に全て合致したものであったと言える。
(今年のこの「テレビ放映が少ないご時世」でなんと5件全てテレビ放映された試合だったのはラッキーというべきなのか)
「肘打ち」にしろ「密集で頭頚部へのショルダー」にしろ「悪意」はないにしろ「意図・自覚」はあったと見られる。
坂手も「自分のスキル不足」表明している。
https://www.chunichi.co.jp/chuspo/article/rugby/news/CK2020020202100083.html
他の選手も同じ思いであると信じる。坂手レッド













「レッド相当プレイ」は試合をぶち壊す

私にとっての「レッド問題」は裁定の是非ではない。
勝敗の行方への影響の大きさだ。
イエローのように10分間の問題なら工夫でしのげる。
がレッドの場合、特に試合開始早々のレッドは試合の当事者達にとっても試合前の綿密なゲームプランなど吹き飛んでしまう。
もちろん見る側にとってもがっかりである。好勝負への期待はぶち壊し、と言っても過言ではない。その処分が正当なものであれ。
(もちろん「ぶち壊し」の後は気持ちを立て直して、14人側がどう戦って行くのか、を観戦のテーマにしてゆくのだが)

レッド撲滅の対策は「判定を甘くすること」ではない
だからレッドカードは減らして欲しい。いや無くして欲しい。
だが「レッドカードを無くす」ための対策は「判定を甘くする」ことではもちろんない。
そんなことをすればラグビーという競技の安全性が保たれないだけではない。
国内リーグでレッドの判定を甘くすれば、選手のプレイにその癖が染み付き、いざ大きな国際試合で日本選手はレッドカード連発を喰らう可能性もある。

レッド撲滅の対策は技術の向上だ

レッドを無くすための対策は「レッド相当のプレイ」を避ける意識・準備・技術の向上、これに尽きる。
これはある意味「トライをとる技術」「トライを防ぐ技術」以上に重要な準備だ。
幸いというか、これまでのこの5件に「危険なタックル」は含まれていない。「危険なタックル」に関しては各チーム・選手が自覚し、少なくとも「レッド相当」のものは防いでいると見ていいのだろう。「ハイタックル」も「空中の相手へのタックル」も「下半身持ち上げ叩き落としタックル」も。これらの「危険なプレイ」はプレイヤーが十分な自覚を持てば少なくとも「レッド相当」のプレイは避けられうるスキルレベル・意識レベルにトップリーグプレイヤー達はあると言えるようだ。
同様に、この5件に見られる「肘打ち」「頭頚部へのショルダーチャージ」も「スキルと意識の向上」で「レッド相当」は十分避けられるだろう。

一つ興味深いのはこの5人、皆、中堅ベテランクラスの選手達ということだ。「若手の未熟さ」が生んだ反則ではない。
今まで「巧妙なプレイ」「ファイトあふれるプレイ」として許され評価されていた癖が抜けていないということなのか。
「若手にできて中堅ベテランにできない」ってことはない。後は意識と訓練の問題なのだろう。

レッドのない試合が見たいのだ
いくらなんでもこれまで4節で「出場停止」5件は多すぎるだろう。

全選手のスキルの向上、チームぐるみ、リーグぐるみの対策を望む。1週休みの「バイウィーク」はレッド対策の準備には絶好の期間だ。この5件のビデオを繰り返し見て学習するのも有効だろう。
「レッド撲滅」はチームの成績をあげる、ファンが喜ぶ試合が見せられる。いいことずくめだ。当然「イエロー」も減るだろう。
トップリーグ、残りの試合、レッドゼロを望む。
15人対15人の真っ向勝負が見たい。全ての試合が「歴史的好勝負」であって欲しい

【追記】「レッド撲滅」の対策としてここでは「選手・チームによる対策」に重点を置いた。
が、やはり専門家である「レフェリー陣」の対応にも期待したい。
動画・ネットを有効に活用し、日頃から「反則基準の明確化」、「出場停止事案」については事後の懇切丁寧な説明等を行っていただきたい。
こうした活動が必ず「レッド撲滅」につながるだろう。


【資料】
以下、5件の出場停止処分をまとめてみた。
時間も記してある。録画がまだある方は「現在の基準」をご自身で検証することをお勧めする。
内容文については「トップリーグ
公式サイトhttps://www.top-league.jp/news/に基づく。

西川 征克 (サントリー)

第1節 東芝戦。 前半29分
ブレイクダウンにおいて相手選手がジャッカルを試みている際、当該選手が腕を使わずショルダーで相手選手の頭頸部に直接コンタクト。3試合。



リチャード・アーノルド(ヤマハ) 
第2節 神戸戦。後半4分58秒
ヤマハゴール前7m付近でボールを持ったヤマハ5番リチャード・アーノルド選手がボールを持っていない左手の肘で、神戸製鋼10番の顔面(顎)・頸部に肘打ちを行った。 4試合。

オーガスティン・プル(日野)
第3節 トヨタ戦。 後半40分49秒
トヨタ陣バックスタンド側10m付近。日野#12 オーガスティン・プル選手が、ボールを持っている右手側の肘を上げて、ディフェンスに入ったトヨタ自動車#21の頸部/顎をヒットした。3試合。

『蛇足コメント』

本来SHでNZ代表経験もあるプル。この日はチーム事情でセンターでの先発。負け試合の中での後半終了間際の「トライにつなげる肘打ち突破。これは凄みがあった。肉弾戦も負けないSHとしてW杯で注目を浴びた南アのデクラーク。プルもその点で決して引けを足らないことを証明した「プレイ」だった。
あ、いや、こんなプレイ褒めてはいかんのだが。ホントは即レッド。良い子はマネしないでね。

ディネスバラン・クリシュナン(日野)
 第4節 ヤマハ戦。 後半37分
日野レッドドルフィンズ#5の選手が、肘を畳んで相手の頭にチャージした。3試合。

坂手 淳史(パナソニック)

第4節 キャノン戦。 前半3分
パナソニック ワイルドナイツ#2の選手がボールキャリーする際、左腕を突き出し、相手の頸部に直接コンタクトした危険なプレー。3試合。
クリシュナン レッド











【補足】福坪龍一郎(サニックス)が第1節後「出場停止1試合」の処分を受けているが「カップ戦における事案」との「連動」による。
リーグ戦のプレイが「レッド相当」ではないのでここでは触れない。
福坪の件についての「トップリーグ公式」の説明は以下の通り。
福坪龍一郎 第1節 NEC戦
「2019年度シーズンにおけるトップリーグカップ2019で出場停止処分を受けており、その後、同シーズンでのイエローカードの提示となり、トップリーグ規約第73条、表彰懲罰規程第11条(「懲罰のガイドライン」参照)に基づき、公益財団法人日本ラグビーフットボール協会規律委員会に上申し、審議の結果、下記の通り処分が決定しましたので、お知らせ致します。」