おとぶろラグビー夜話

ラグビーに関するあれやこれや。

2019年05月

清宮2














「清宮代表監督」には問題あり?
清宮克幸氏の「日本代表監督待望論」が根強い。まあ日本人監督とすればこの人しかいないだろう。ああ、沢木敬介氏も実績あり、か。トップリーグ2連覇。しかし待望論はあまり聞こえない。
それはともかく。
清宮氏については
否定的意見もある。
「彼は選手として、監督として国際経験があまりにも乏しい。国際試合を戦うことこそ“日本代表の仕事”である以上、清宮氏ではあまりにも心もとない。」
なるほど、確かにかつてのスター的日本人代表監督、宿沢氏・平尾氏に比べられるとつい納得してしまう。
宿沢氏といえば代表SHとして国際試合を何度も経験している、と思ったが代表キャップはなんと3。同時代に今里という名ハーフがいたとはいえこれは驚きではある。当時は選手交代は負傷時のみ2名までだったのでこんなものなのか。英仏遠征には行ったはずだ。ウェールズ戦には出ていた。これを合わせても3か。
大学卒業から間もなく現役を引退したものの、金融マンとして英国勤務も長かった。当然、英語も堪能であった。
また英国勤務中も当地で見る「本場のラグビー」について日本協会に自主的にレポートを送っていたとの「伝説」も伝えられる。キャップが少ないとはいえ文句なしの「国際派」ではある。
平尾氏は同志社卒業後は英国に留学。一時ファッション誌に出るなどの「アマチュア規定違反」などで干されたことはあったものの、常に日本代表の中心、キャプテンとして多くの国際試合にも出場してきた。キャップは35。
この35も原則途中交代なしの時代の数字であるので現代とは比較できない。

こうしてみると二人に比べ、清宮氏の経歴は確かに国内に偏ってはいる。。代表キャップもゼロ。
外国留学も外国勤務もない。「国際派」とはとても言えない。
ただし日本で他に「国際派」と言える人材がいるかというと見当たらない。単に海外でプレイした実績であれば。岩淵健介氏、村田亙氏などがいるが、指導者としての実績はほぼない。
で、「国際派」にこだわれば必然的に外国人てことになるのが実情である。

エデイ
エディ・ジョーンズは「国際派」だったのか
だが待て。
あのエデイ・ジョーンズはどうか。
現役選手としては「州代表」まで。国際試合もあったかもしれないがまあそんな程度ではある。その後は高校教員、校長などを勤めている。
ラグビーコーチとしてのスタートは東海大。彼にとっては「国際派」へのデビューではある。「ラグビー後進国・日本」での。
その後日本代表FWコーチ、サントリーFWコーチ経て、母国オーストラリア・ブランビーズのヘッドコーチに就任。そのあとはもう、とんとん拍子にオーストラリア代表ヘッドコーチ、南アフリカ・アドバイザー、イングランド・サラセンズ・ヘッドコーチ、サントリー・ヘッドコーチ。
そして日本代表ヘッドコーチとしてワールドカップで南アを撃破。3勝を上げる。
その後ラグビーの母国イングランドのヘッドコーチとして現在に至る。

こうして見ると、あのエディですら現役時代から「国際派」なんぞでなかったことがわかる。もちろん日本とオーストラリアでは国情が異なる。オーストラリア国内にいるだけでも、日本国内にいるだけに比べれば「十分国際的である」と言う言い方も可能ではある。
まあオーストラリアの「州代表」がどの程度の国際試合をこなすかは知らないが対戦相手は世界のトップレベルではないことは確かだろう。そういう意味では清宮氏だって、高校日本代表でキャプテン、U23代表として米国に勝利、日本選抜でオックスフォードに勝利、と代表には選ばれなかったものの、ソコソコの国際経験はある。
逆に若くして国際試合に多数出場し、あるいは留学・ビジネスなどで「国際経験」豊富である人物など、今の日本、いくらでも存在する。
だがそんなものが「代表監督」の十分条件でなどありえないのは当然である。
エディを見れば必要条件でもないことが見えてくるだろう。
結局は「指導者としての実績」なのだ。

森保一













サッカー代表監督の森保氏も「国際派」なんかではない
サッカーでは現在、森保一氏が代表監督を務める。彼はあの「ドーハの悲劇」に出場するなど代表暦はソコソコあるものの決して「不動の代表」などではなかった。当然「国際経験」もソコソコである。海外チームでのプレイ経験もない。だが現在、代表監督として着実に実績を残していることに異存はあるまい。
もちろんその「実績」は森保氏個人だけのものではなく、日本サッカー、Jリーグの長期的展望とその展開と不可分であることはいうまでもない。
ただサッカー界にしろ、オフト以来、加茂の解任、岡田の緊急出動、そしてオシムが倒れて再び岡田の緊急出動、を除けばずっと外国人監督が続いてきた。そしてロシア大会直前の、西野の緊急出動。
そして次、緊急出動ではなく、腰を据えた日本人監督があるとしたら、選手としての国際経験、単に代表として国際試合をこなした、というだけでなく、自身が外国のトップチームに所属し、その主力を務めるなどの「ナマの国際経験」を積んだ「中田英寿世代」以降になるだろう、というのが大方の見方ではあった。つまり「もう少し先の話」。
だがサッカー界は「今」、森保氏を抜擢した。
いや「抜擢」などという言葉はふさわしくないだろう。「当然の選択」というべきか。
サンフレッチェ広島の監督として、名将ペトロビッチの後任として常に優勝争いを維持してきた。就任以来4年間で3度の優勝。ペトリビッチ時代を含め、浦和などの「ビッグクラブ」に代表クラスの選手を次々「引き抜かれ」ながらも優勝争いを続けたのはぺトロビッチ監督ごと「引き抜いた」浦和ではなく、森保氏率いる広島であり続けた。
この間他のJチームは浦和以外にも、代表クラスを揃え、外国人監督を起用してきた例もあったが、森保氏ほどの結果を出した監督はいない、ということだ。
その後ACLなど「国際試合」では実績を残せず広島監督は解任。
やはり国際試合には弱かっった?

だがその後、2020東京五輪に向けた代表監督に就任、さらにフル代表の監督にも就任。五輪・フル代表を兼ねる名実ともに日本サッカーの強化の現場最高責任者として今に至る。
まさに「国際経験」「国際試合の実績」などではなく、「国内リーグの指導実績」のみで選ばれたと言っても過言ではあるまい、そして結果を残している。
数々の「失敗」も繰り返してきた日本サッカーの代表監督選び。その後にたどり着いた結論が「森保」だったのだ。
今から見れば「広島監督解任」も「代表監督就任」への布石・準備だったのではないかとも思える。協会主導の。

代表監督に求められるのは「勝ち切る力量」である
つまり、そういうことなのだ。
代表監督にふさわしいのは「国際経験」や「語学力」よりも、国内リーグというある意味年間を通じて最も過酷な、そして「地力」を問われる戦いの中で勝ちきれる力量、これに尽きるのではないか。
そして育成力。もちろん代表監督はチームの監督とは異なり、選手やチームをじっくり育成する時間など限られている。だがそういう限定された範囲でもやはり「育成力」は問われる。特に最近は代表であっても年間かなりの「集合」が可能となっている。試合も含め。

国際経験、語学力、そういうものはもちろんあったほうがいいに決まってはいる。
だがそれらは有能なスタッフがいればいくらでも代えがきく。
だが一つの試合、さらには連続した試合に一つ一つ勝ち切る、準備・作戦・選手選考・そして試合中の臨機応変の対応、短い時間でも選手を飛躍させるコミュニケーション能力、創造的練習、などは代えの効かない、まさに「監督の力量」なのだ。
そしてその「力量」から生まれる「カリスマ性」
その対応において、国内リーグ、国際試合の区別などない。

清宮氏の実績はサッカー森保氏の実績と重なる
そうした力量を買われ森保氏は代表監督に選ばれ結果を残している。もちろん選手の信頼も厚いという。
そして清宮氏。
早稲田監督、ヤマハ監督を通じ、常に弱体したチームを立て直してきた。
ヤマハ選手の「個の力」、ヤマハ入団以前の「実績」などは、全トップリーグ中、下から数えたほうが早いのではないか。外国人など、以前のトゥイアリ、現在のスミス以外はスーパーラグビーに手の届かなかったような選手ばかりだ。
日本人で言えば五郎丸・太田尾・矢冨・山村らベテラン世代以降は大学のトップ選手はほぼいない。

そういう中、ここ数年常に優勝争いを続け、日本選手権のタイトルも手中にした。
その上でヤマハで育った選手が何人も代表入りしている。
もちろんこの間、トップリーグには世界レベルの選手と日本代表クラスの選手を揃え世界レベルのヘッドコーチが指揮する、そういうチームもも多数存在している。そういう中でのこれだけの実績。
まさにサッカーの森保氏とも重なる。

トップリーグの「世界的名将」の実績を考える
トップリーグには現在「世界的名将」とも言えるヘッドコーチが何人もいる。パナソニックのロビー・デイーンズ、トヨタのジェイク・ホワイト、神戸の総監督ウェイン・スミス。
そうそうたる面々である。だがパナソニック、神戸の場合、これらのチームはまた選手も世界的、あるいは日本代表クラスが目白押し。そういうメンバーを揃えた上でで優勝争いをするチームの監督が「日本代表監督」にふさわしいのかは甚だ疑問ではある。
私、個人的にはパナのラグビーが好きで、これを指揮するロビー・デイーンズもスゴイと思う。だが一方、「あれだけのメンバー揃えればこそだなあ」とも思うのだ。例えばヤマハ並みのメンバーであのラグビーができるのか。あれだけの成績が残せるのか、と。
さらにはあれだけのメンバー揃えながら優勝できなかった昨シーズンはなんなんだ、とも。

ある評論家はパナソニックの昨季の不振についてこう解説していた。
「やはりバーンズの負傷欠場が痛かったですね。」
はあ〜?
そりゃバーンズの欠場は痛い。私、個人的にもバーンズは大好き。彼がスタンドを務めるとバックスラインが一気に活気付く。さらにキック処理で後ろに下がってからの動きもいい。一見忠実なプレイスタイルに見えて、時に大胆奇抜なカウンターアタックを仕掛ける。
くー!たまらんな。 しかしそのバーンズとはいえ、彼がいないとパナは一気に沈没してしまうのか。スタンドができるのは他に、山澤、松田力也、森谷、笹倉、代表クラスがいくらでもいる。野口だってやれるだろう。
結局パナはバーンズの個人的力量に「おんぶに抱っこ」ってことなのか。
一方ヤマハのスタンドなんてキャップゼロの太田尾がほぼ出ずっぱりだった、。太田尾引退後は関東リーグ戦2部東洋大出の清原と、もう一人やはり世界的には無名のマッガーン(経歴には卒業高しか書いていない)。
これで優勝争いに毎年食い込むのが「ヤマハの底力」、それを引き出す「清宮の底力」、と言うべきだろう。

今年15年ぶりに優勝を果たした神戸の躍進は素晴らしい。だがここもダン・カーターの加入でアンドリユー・エリス、アダム・アシュリークーパー、日和佐らその他代表クラスの底力を一気に開花させたとの見方に異存はないだろう。「監督の力量」がどれだけだったのかはちょっと判断ができない。
もちろんどんな名選手を揃えようとも監督スタッフがヘボならどうにも結果を残せない。
同じ神戸でもサッカーのヴィッセルなどイニエスタ・ビジャ・ポドルスキーなど世界のスーパースターを揃えてもどうにも勝てない。監督人事も二転三転のドタバタである。それに比べれば神戸コベルコはちゃんとした結果を残したとは言えるだろう。
いやサッカーの神戸など揶揄してる場合じゃない。
トップリーグの東芝。
神戸にも引けを取らないメンバーを揃えながら2年続けての低迷。
こうした例を見れば、多くの「スター選手」を率いてきっちり結果を出すというのも一つの「名指導者像」ではある。ただしこのタイプの「名指導者」はサッカーにしろラグビーにしろ、日本代表の求める監督像ではないだろう。
サッカーでは、鹿島アントラーズのアドバイザーとしてあれだけの実績を残しなたジーコだが、が代表監督としての結果は物足らないものだった。
アントラーズではジーコ直輸入のブラジル人現役代表クラス選手を中心に多くの日本人スターを育て、Jリーグに大きな実績を残した。だが、ワールドカップで世界と戦う時、世界的選手などせいぜい中田英寿ぐらいのチームではやはり同様の戦い方では通用しなかった。
やはりジーコも「スター軍団」を率いてこそ「結果」を出すタイプでの「名指導者」であったということなのだろう。

ういう意味ではトヨタを率い、「弱くはないが強くもない」、藤島大氏言う所の「何処に勝ってもおかしくない、何処に負けてもおかしくない」チームを一躍優勝争いに食い込ませたジェイク・ホワイト氏の監督としての力量は注目に値する。学生時代、突出した活躍を見せたわけでもない姫野を1年目からキャプテンに「大抜擢」しその潜在能力を一気に開花させた判断・力量はさすがのものである。


代表監督には「日本理解」が不可欠だ
一方日本代表監督は日本のラグビー事情、文化、国民性などを深く理解している人材であるべきであると思う。別に情緒的な話をしているのではない。チームとして結果を残すため、その国と国民性を理解していることは不可欠なのではないか。
その点サッカーの外国人代表監督はやや失敗が多かったと言える。オフト、ジーコ、オシム以外は皆「いきなり日本に連れてきた」。ファルカン、トルシエ、ザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチなど。
で、結果といえばワールドカップ出場は果たせたものの選手の力量を十分に引き出せたとは言えない、と私は思っている。トルシエはベスト16を果たしたがこれは監督の力量と言うよりは、開催国のアドバンテージ、と見るべきだろう。あるいは選手の力量。
逆に代表選手の力量を最大限に発揮させたのは2010年南アフリカワールドカップの岡田氏、2018年ロシア大会の西野氏だろう。ともにベスト16。ともに「緊急出動」だったにもかかわらずだ。
もちろん二人とも日本人。日本の事情は十二分に理解・把握している。
もちろん両者に共通しているのはJリーグ監督として、実績・結果を残していることだ。ともに「スター軍団」を率いてのものではない。
岡田氏は札幌をJ1に昇格させ、その後横浜Fマリノスを1年目から2年連続優勝に導いている。
西野氏はG大阪を常勝チームに育て2度の「Jリーグ最優秀監督」に選ばれている。
また2008年のクラブワールドカップでは欧州チャンピオンのマンチェスターユナイテッド相手に5点は失うも3点取る豪快なサッカーを指揮して見せたのは未だ記憶に新しい。
アトランタオリンピックでブラジルには勝利したものの、その「消極的采配」で一部から批判を浴びたのがウソのような攻撃的采配だった。


ラグビーにおいては「いきなり日本に連れてきた」外国人監督といえばフランス人エリサリド。やはり勝敗以前に「失敗」に終わっている。それ以降は、カーワン、ジョーンズ、ジョセフ、皆、日本で数年以上の選手経験、あるいは指導者経験を積んでの「代表監督」だった。日本協会として賢明な選択であったと思う。「他に知らなかった」のかもしれないが。
そしてエデイは見事に結果を残した。果たしてジョセフは?

代表監督の条件とは

さてここらで代表監督の「条件」が見えてきた。
第一に、監督としての実績があること。これは海外での実績に限定することはない。サッカーの例を見ても、日本の国内リーグで「結果」を出していれば何よりの実績であると言える。
次に、ただ実績と言っても「スター軍団」を率いての「実績」であるのならこれは「日本代表監督」にはふさわしいとは言えない。現在日本ラグビーがどれだけ躍進していようとも、こと「個の力」としてみればやはり全体として「世界のトップ」との差は認めざるをえない。そうした現状の中で世界に勝ち切るには「個の力」で劣っていても勝つ、そういう戦略、監督としての力量が求められる。
(もちろん個々の選手、あるいは指導者は「個の力」だって負けない、と言う気概は求められる。姫野もそう断言していた。だがその「気概」と「具体的戦略」はまた別の話。)

これはサッカーにおいても同様である。代表クラスを次々引き抜かれても勝ち続けた広島を率いた森保氏の実績、リーグ初優勝を遂げた岡田・西野両氏、当時代表クラスゼロで常に優勝戦線に食い込んだ千葉を率いたオシム。当時千葉は対戦相手から「千葉は攻撃になると選手が2人ぐらい多いんじゃないか」と試合中思われたという。そういう戦略。


第二に、代表監督は日本人の国民性・文化・ラグビー事情に精通していること。外国人であるなら日本に選手としてあるいはスタッフとして数年以上の「関わり」があること。
「いきなり日本に連れてくる」のはダメ。

こうした条件を満たす人材は現在世界にいるのか
これらの条件を満たす人材を考える。

今回のワールドカップで高い実績を残せばジェイミー・ジョセフ続投、と言う選択もあるだろう。しかしそれは本人が望まないのではないか。その時点で新しい選択をするのではないか。エディもそうしたように。
一方「かつて数年以上日本でプレイ、あるいはスタッフとして滞在し、現在海外リーグで指導者として高い実績をあげている人物」がいればもちろん有力な候補となりうる。しかしその辺については私は詳しくはないので判断はできない。。
その上で、私の知る限り、上記の条件を満たすのは、清宮克幸、彼しかいない、のだ。
私は別に「日本代表監督はやはり日本人で」などと狭い了見の話をしているのではない。世界を見渡してどこの国籍であれ最良の選択をすべきである、と思っている。

差をつけた「次点」でジェイク・ホワイトか。彼は今後一気に最有力にのし上がる可能性はある。


最後に愚痴と結論と・・・。
「国際性など必要ない」とは言ったものの、やはり清宮氏のその点は気にはなる。 ジョセフにしろサッカーの森保氏、岡田氏、西野氏にしろ、現役時代の「国際性」など皆ソコソコである。清宮氏もこの点では問題は全くない、と考える。
ただ、上記4人とも代表監督を受ける前にそれぞれスタッフとして大きな国際大会に関わっている。岡田氏は加茂監督の下でコーチ、西野氏は五輪監督、エデイの場合はスーパーラグビーという国際リーグのヘッドコーチ。
清宮の場合これがない。指導者としては単発の国際試合があるだけである。
先述したように、森保氏の場合日本協会が積極的に森保氏に国際経験を積ませたとも思える。その卓越した監督実績を踏まえ、将来の「代表監督」を見据えて、五輪代表監督、ロシアワールドカップのコーチを経験させ、その上での代表監督。
ラグビー日本協会もこのぐらいの「長期展望」が欲しかった。最終的に誰が次期代表監督になるにしろ、その有力候補として清宮氏をなんらかの形で大きな国際試合に参加させるべきだった。
まあそれは愚痴である。時間は戻せない。日本協会の「展望のなさ」であるとも言える。
この上は超有能な「国際派」スタッフをつけて清宮氏の「卓越した監督の力量」を代表監督として発揮してもらいたい。
いや今からでも遅くない。来るべき日本ワールドカップに何らかのスタッフとして清宮氏を全行程帯同させてはどうか。清宮氏にとって、日本ラグビーにとって、その経験は大きな財産になるはずだ。「代表監督・清宮」にとっての唯一の「危惧」もこれで解消される。

ま、「最良の選択であれば誰でも」とは言ったもの、やはり「清宮代表監督」、見てみたい。
彼がどんなメンバーを選び、どんなラグビーをするのかを見てみたい。
それは清宮氏が日本人であるからではなく、国籍・出身がどうであれ、清宮氏が卓越した実績と将来への展望を抱かせる清宮克幸その人であるからだ。










アイルランド代表











国境を超えたアイルランド代表チーム
5月に「NHKサンデースポーツ」で放送されたアイルランド取材。「国境を超えた代表チームとラグビーアンセム〈アイルランズ・コール〉」。
この企画、とても良かった。
一般の人が知らない、もしかしたらラグビーファンでも知らない「アイルランド代表」の真実を、私の知る限り初めてメジャーなTV番組で取り上げたものだった。 いやすでに知っていた人にとっても、映像つきでメインキャスターが取材に行くという企画が素晴らしい。

ざっと説明すると、アイルランド島は政治的国境としては英国からの独立を果たした「アイルランド共和国」と「英国内の北アイルランド」が存在する。
アイルランド当然「別の国家」である。それのみならず、この地域では宗教的対立等により内戦・テロが絶えなかった。互いの
家族や友人が多数殺されてきた歴史。世界的常識においては「憎しみの連鎖・報復の応酬」が起こって当然の中、ことラグビーにおいては、「アイルランド代表」としてチームを組む。もちろん統一「国歌」など存在しない。よってラグビー代表だけのための「ラグビーアンセム」が作られた。ラグビーにおいては歴史的憎悪、政治的対立を超え、「アイルランド人」としてともに歌い戦う。

キャスターの大越健介氏は番組をこうシメていた。
「これぞラグビーの素晴らしさ、スポーツの素晴らしさですね。」
えっ、このシメは事実と違うだろう。
スポーツの素晴らしさ?

サッカーの英国内ネイションは国境を超えない
ラグビーと同様、サッカーも、オリンピック以外では国際試合で英国「ユナイテッド・キングダム(U.K.)ではなく「英国内ネイション、イングランド・ウェールズ・スコットランド」とアイルランドとして戦う。しかしサッカーにおいてはアイルランドは、国境を挟んで「アイルランド共和国」と「北アイルランド」2代表が存在し、一つのチームではない。
つまりサッカーの事情はこの特集のテーマとは明らかに反する。「スポーツの素晴らしさ」と一括りにする表現は当たらないだろう。

スポーツで「国境を越え」ればいいってもんじゃない
一方スポーツで「国境を超えた代表チーム」といえば平昌オリンピックの女子アイスホッケーで、急遽、韓国・北朝鮮の「南北合同チーム」が組まれたという「事件」があった。
が、これも「政治的国境をスポーツが超えた」というアイルランドラグビーの精神とは明らかに似て非なるものであると言える。この場合、「政治によるスポーツ利用」「政治パフォーマンスにスポーツが利用された」と見るべきだろう。しかもオリンピック開催の20日あまり前に「例外的に認められた」北朝鮮の参加、そして「合同」などという完全なルール無視の暴挙・愚挙であった。スポーツ・オリンピック、選手・コーチ、対戦相手、ファン、全てを愚弄するものであった。

「政治的国境を越えて代表チームを組む」アイルランドラグビーのような例は他国には無く、世界一の人気スポーツ、サッカーなどでは決して見られるものではなく、「スポーツの素晴らしさ」と言うべきものではない。
これぞ、ラグビー「ならではの」素晴らしさなのだ。
いや、ラグビーあるところ常に「政治的国境を超える」わけではもちろんない。
南北朝鮮統一ラグビー代表などもちろん存在しないし。
つまりもっと正確には「アイルランドラグビーの素晴らしさ」と言うべきか。

追記〉クリケット・フィールドホッケーもアイルランド統一チームがあるという。 スポーツと一口に言っても世界的メジャースポーツ以外にもあり、それぞれの文化があるのだろう。その上でアイルランドという特殊な地域の事情は簡単には解釈できないようです。


「勝たねばならない理由」を持つ者の「実力を超える強さ」

ちょっと脇道にそれる。
70年代、ボクシングヘビー級で圧倒的強さ・破壊力を誇ってチャンピオンに君臨していたジョージ・フォアマン。全盛期の彼を倒したのは年齢的に盛りを過ぎたモハメド・アリだった。アリは「ベトナム戦争の懲役拒否」で無敗のままチャンピオンを剥奪されていたのだ。マルコムX率いる黒人解放運動にも深く関わっていた。「カシアス・クレイ」という「奴隷名」を捨て、「白人にあてがわれたキリスト教」をも捨て、イスラム教徒に改宗、名前も変えたのはもちろんこうした「政治的思想」による。
チャンピオン剥奪ももちろん単に「兵役拒否」だけでなく、こうした「反白人主流主義」への「報復でもあった。
アリ2














懲役拒否の無罪判決後ボクシングに復帰。そしてアフリカ・「キンシャサの奇跡」で3年7か月ぶりに王座に復帰。
敗れたフォアマンは後にコメントしている。
「アリには勝たねばならない理由があった。私にはそれがなかった。」


世界ランク1位のNZ、2位のアイルランドを支えるもの
さてもちろん現在アイルランドは、強い。

NZについで世界ランク2位!
世界で最も異民族尊重が進むNZが世界ランク1位。
世界で唯一国境を超え代表チームを組むアイルランドが2位。
こういう現象がラグビーにおいて存在していることは記しておきたい。
そういう「特別な事情」「特別な思い」が込められた「代表チーム」には、他にはない「絶対に負けられない理由」が存在する。
アイルランド代表。実力ももちろんだが、その実力をさらに倍加させる「理由」がある。
もちろんこうした「国境を越え、負の歴史を超えた」アイルランド代表のあり方に選手、「両国民」が全員賛同しているかは不明だ。不満を抱えつつ代表でプレイする選手もいるかもしれない。だが、であるからこそ「絶対に負けられない」との思いもまた大きくなるだろう。
手強いぞ。アイルランド代表。

オマケ
引退したフォアマンはその後キリスト教伝道師となる。そして教会建設の資金稼ぎのため、貧しい子に夢を与えるため、現役に復帰。45歳で奇跡のチャンピオン復帰を果たす。
この時のフォアマンには「勝たねばならない理由」が存在したのだろう。

意外なオマケ

ところでモハメド・アリら「黒人」は最近では「アフリカ系」と言われる。
だが米国の「黒人」のほとんどはまた「白人」の血も引いている。
モハメド・アリはアイルランドの血も引いている「アイルランド系」でもあるという。






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