満員










ラグビー人気爆発!
しかし競技場により、ばらつきがあるのが気になる

第6節終了。
が、「新型コロナ」でひと休み。
これまでは空前の観客数でラグビー人気爆発!
という喜びがある一方、「いやいや人気など爆発していない。5節では長居に2万人入っても神戸ユニバには5千人しか入っていない。王者神戸製鋼の試合であるにもかかわらず。」って声もある。まあかつてなら5千人入れば上出来だったが今やそれでは喜べないのも事実だ。さらには「夢の島」2試合や「相模原ギオンス」では2千500〜3千500人。人口4千万首都圏でこの数字は確かに少ない。
だがこれをもって「ラグビー人気に早くも翳りか」ってのもどうか。
とはいうものの、この現象の原因は考える必要がある。日本に真の「ラグビー文化」が根付くためにも。

「プロ野球人気爆発」はいつからなのか

日本における「人気スポーツ」といえば何といっても野球。見るのもプレイするのも、長く圧倒的人気を誇ってきた。
プロ野球は戦後一貫して日本の「国民的スポーツ」だった。
・・と思われがちだが実はそうでもない。少なくとも「見る」ことについては。
以前は、特にパ・リーグの試合などは内外野ガラガラで、スタンドではアベックがいちゃついてる映像が「プロ野球ニュース」で抜かれたりしていたもんだ。
川崎球場野球そっちのけで「流しそうめん」やるやつもいた。(写真)
日本シリーズですら「阪急・巨人戦」など西宮球場のスタンドは空席だらけ。
こうした事情はセ・リーグでも実はそう変わらなかった。
巨人戦だけは満員だったりしたがそれ以外は。まあパ・リーグよりはマシ、という程度の観客数だった。日本中どこへ行っても子供達の野球帽はYGマーク。それしか売っていなかった。(いや大阪がどうだったのかはしらないが)
この頃は「球団経営」は「収益など期待すべきものですらなく、社会貢献である」とまで言われたものだ。もちろん球団経営者に。

こうした「巨人におんぶに抱っこ」状態を脱却させたのがパ・リーグ球団による「地域密着戦略」だった。
1978年、経営不安定だったライオンズを西武が買収、埼玉への移転、西武球場建設を皮切りに、ダイエー(現ソフトバンク)が福岡に、ロッテが千葉に、日本ハムが北海道に、そして「新球団・楽天」が仙台・東北に拠点を構え、かつ各球団が事実上の「専用球場」を持つ。
それぞれの「移転」には当時「それは無理だ」との危惧も強かった。だがやってれば大成功。すべての球団が地域密着を進め、ファンサービスに努め、観客数を増やし「収益」を上げ、「地域の文化」となった。
これに伴いセ・リーグも「地域密着」を志向。球団の移転はなかったものの、各球団はそれまでなかった「地域名」を球団名に付ける動きが加速する。
カープ女子「東京ヤクルトスワローズ」「横浜DNAベイスターズ」。中日、阪神はまあもともと「地域名」的な名前ではあったか。
もちろん元祖は広島の「赤ヘル旋風」。
セ・リーグ球団の地元市民もパ・リーグファンの盛り上がりに気づいたはずだ。
「地元チームを応援するって楽しい!!」
いや地元でなくてもいい。
「ひいきチームを決めて応援するのって楽しい!」
こうした流れの中で現在の「プロ野球大人気状態」がある。

野球帽はもちろん応援チームのものをかぶる。

Jリーグが日本に新しい「スポーツ文化」をもたらした。
その後発のプロ球技、Jリーグは発足当初からこうした地域密着理念を掲げた。初年度参加クラブは、現存するチームの「実績」よりも「各地域分散路線」をリーグが主導、というか川淵氏主導で推進。そのあおりを食って、実績はあるものの他クラブとホームが重なるヤマハ(後のジュビロ磐田)・ヤンマー(セレッソ大阪)・日立(柏レイソル)・フジタ(後の湘南ベルマーレ)、は初年度Jリーグ落選。一方なんの実績もない鹿島や清水がJの「オリジナル10」となる。
当時は「落選組」からは相当不満が噴出したはずである。
しかしあれから27年、茨城の人口4万5千の田舎町だった鹿島は今や有数のサッカータウン、収益は70億円という。
またプロ野球が12球団固定、一時は縮小案まで出ていたのに対し、Jリーグは拡大路線。
どんな小さな町でも「身の丈」でクラブ運営し。成功する実績を作ってきた。
クラブ数はJ3まで、北海道から沖縄まで54を数える。
設立当初「夢物語」だった「Jリーグ100年構想」にある「日本全国に100クラブ」も見えてきた。
各クラブにはジュニアクラブの設置が義務付けられ、女子クラブの運営も推奨される。
各会場では代表選手がいなくても、優勝争いに関係なかろうとも、代表が思うような結果が出せなくても、サポーターで埋まる。
日本における「スポーツ文化」を今までにない形で開花させた。
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(写真はJ3のさらに下、JFL・FC今治の満員の観客席。今治タオルがはためく)
もちろんさらに後発のbリーグもこの路線を行き、順調な成長を見せている。

「おらが町のクラブ」で日本に「ラグビー文化を」
で、ラグビーである。私は間違いなく今「ラグビー人気の爆発」であると思う。
だが冒頭で記したように観客の入りはばらつきがある。これでは「日本の文化」になったとは言えない。
もはや理由は言うまでもないだろう。
ラグビーファン人口は確実に増えた。日本人の多くが「ラグビーの面白さ」に気づいた。が、私も含め「ただのラグビーファン」は好カードに流れる。まして同地域で「優勝争い」のカードと「下位争い」あるいは「勝敗の見えたカード」が重なれば当然「ただのラグビーファン」は「優勝争い」を見に行く。
冒頭で紹介した、第5節の試合で観客数「2万人前後」から「数千人」の差はまさにこの表れである。
ラグビー人気の「爆発」から「定着」へ、「どの会場もファンで溢れる」状態を産むには、「おらがチーム」のファンの開拓・定着が欠かせない、ということだ。
各試合、現状のような「協会・リーグ主催」「1会場2試合」などを続けていてはその「理想」は遠ざかるばかりである。
そのための基本路線となるのが「地域密着」と「チーム主体の試合開催」。

「プロリーグ」とは何か
来たる「新リーグ」。ラグビー人気定着のためにも、私はぜひ「プロリーグ」としてスタートしてほしい。
反町だが「プロリーグ」の定義は必ずしも「全選手のプロ契約」などではない。Jリーグも当初は「社員選手」が複数いた。のちに複数のクラブ、五輪代表などで監督を歴任し、手腕を発揮する反町康治(写真)だってはじめは全日空の「社員選手」だった。
(ただしプロ契約を望む選手には希望が叶えられる環境は整備してほしい)
そんなことよりも「プロリーグ」の定義は「各クラブが各試合を主催・運営し収益をあげること」だ。
「収益を上げるため」にファンサービスを考える、ファンクラブを充実させる、地元ファンと一体となったクラブ作りを進める。地域自治体との協力を強化する。そのやり方は地域の特性、クラブの特徴に合わせ様々であることが求められる。「協会・リーグ主催」ではこれができない。だからこそのプロリーグ。
こうした「成功しているプロリーグでは当たり前」のことを「ラグビー新リーグ」でも展開すれば、ラグビーも、「スター選手の有無」「代表の活躍」「優勝争い」に関わりなく各会場ファンがつめかけるのは確実であると言える。たとえ隣の会場でスター選手たちが「優勝争い」を繰り広げていても、「自分のチーム」の応援に行く、好きな選手を追っかける。

さらにはクラブ数の拡大。日本中でラグビーファン、ではなく各クラブファンが各会場に詰めかける」「おらが街のクラブを応援する」
「プロラグビーチームなんか都会でなけりゃ無理さ」
そんな声も聞かれる。そんなことは絶対にない。鹿島アントラーズを見よ。他のJクラブ、bクラブを見よ。今までサッカーとかバスケとか見たことない地元のおっちゃん・おばはんが孫を連れて地元チームの応援に行く。
日本にはまだJbもない中小都市がいっぱいある。新ラグビーチームが参入する余地はいくらでもある。もちろんJbと重複したって構わない。

新リーグの参入要件、これだけは死守せよ

来る「新リーグ」の参入要件には幸い以下の項目が上げられている。
・チームが「事業機能」を持つこと。
・チーム名に地域名を入れること。
・ホームエリアを持つこと。
・2023年までに1万5千人収容のホームスタジアムを確保する。そのためチーム・協会・リーグが支援する。

欲を言えばこれに「下部組織(ジュニア・女子チーム)の運営」も入れたいところだがまあとりあえずはいい。今のトップリーグチームや大学クラブにはジュニアチームを運営しているところも少なくないようだ。自主的にできているなら「参入要件」に入れる必要もない。
私はこれで充分であると思う。これができれば立派な「プロリーグ」だ。
(この概要が発表された後、記者から「これはプロリーグですか」と質問された岩淵専務理事、「それはプロリーグの定義によりますが・・」と答えたという。
これはいけない。新しいものを始める時リーダーが曖昧な物言いをしてはいけない。きっぱりと「プロリーグです」と言うべきだった。上記の理由を掲げて。)

ただしこのうち一つでも欠ければ「新リーグ」は大失敗に終わる可能性もある。
どうか、今の「ラグビー人気」を「ラグビー文化」へと導く「新プロリーグ」にしてほしい。
現在の「代表人気」「スター人気」「優勝争い」だけに支えられた「ラグビー人気」は下手すりゃバブルで終わる。
観客席はまたガラガラになることもあり得る。
「そうめん流し」やるやつはいないと思うが。